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第二回 スマートビルでできること

米国で注目されているスマートビルについての動向を全三回にわたってお伝えします。第二回となる今回は、スマートビルでできることについてです。

 

ビルの運営情報を経営情報に生かせます

過去数十年間、ビル管理システムは、冷暖房などビル内の機器を適切にコントロールし、エネルギーを管理するプロセスを自動化してきました。こうしたエネルギー効率化の手段は組織のサスティナビリティ目標の達成に役立ちますが、それらのデータをビル管理システムの中だけにとどめ、有効活用できていないことが多いのではないでしょうか?

そこでポイントとなるのが、「ミドルウェア」と呼ばれる通信の変換ソフトウェアです。「ミドルウェア」はさまざまな機器メーカーの通信プロトコルがシステムに同居していても、建物全体のあらゆる管理システムから漏れなくデータを収集します。そして、収集されたデータは分析とレポート機能を備えた共通プラットフォームへ統合されます。

このデータを「見える化」する手段の一つとして、Webベースのダッシュボード表示で、どの施設のエネルギー使用量が上昇しているか、保守費用が異常に発生している施設はないかを視覚的に即座に認識することができるものもあります。

このようなシステムがあれば、情報にどこからでもアクセスでき、かつ迅速に確認できるので、日頃システムに慣れていない経営層の方などにも全体を把握しやすくなります。より良い意思決定は、収益性の直接的な改善に貢献するでしょう。

 

チラープラントの運用効率はかつてないレベルまで高まりつつあります

最新のチラープラント(冷却設備プラント)は非常に複雑な装置で、規模によっては極めて高価です。ビル管理システムとの通信機能が実現したのはかなり前のことですが、各機器メーカーが他社と互換性のない専用通信方式を用いている場合には、詳細情報の送受信はできず、有用性が高くありませんでした。しかし、近年では、BACnetのような共通の通信方式(オープンプロトコル)が導入されたことで、機器メーカーが異なっていても、同じネットワークに含まれる複数のチラー設備に対して高度な最適化を施せるようになりました。この結果、チラープラントで長年培ってきたノウハウをもとに高度な制御アルゴリズムが開発され、運用効率はかつてないほど高まっています。

これが一般にチラープラントの最適化と呼ばれる能力です。この制御では、チラーが軽負荷で稼働しているときに、設備の効率を大幅に向上させることができます。実際、設定条件より軽い負荷状態は全稼働時間の99%に及びます。たとえば、多くのチラー装置は、外気温や湿度が設計値より低い場合、冷却水の設定温度を通常より下げて運用でき、設計値以上の冷凍能力を得ることもできます。この機能により、エネルギー消費量と温室効果ガス排出量を削減できます。

さらに高機能でスマートなチラープラント最適化システムでは、装置の運転状態とメーカー推奨値を比較して装置の早期劣化や信頼性低下につながる運転条件を避けることができます。また、詳細な運転状態の記録と分析により、迅速な診断と問題解決に役立つデータにもすぐにアクセスできます。チラープラントシステムは、新設および既設いずれの設備でも運用コストを削減します。従来の設備構成でも約10%のエネルギー消費量の削減が確認され、さらに新設のプラントにおいてインバータ制御タイプの機器を採用し、配管構成なども最適化された場合、従来の構成と比較して40%近くも省エネできます。

 

ビルをスマートグリッドへ接続するメリット

スマートビルではビル外の知識も活用できます。 最初に着手するのはスマートグリッド(送電網)とのやり取りです。電力会社は、電力市場の変化に応じて変動する料金体系の導入を進めており、電力卸売価格が高騰したときや電力グリッドの信頼性が損なわれたとき、電力供給に加えてリアルタイムでの電力需要調整が可能となります。ビルの効率的な管理を行うために、需要に対する即応力はますます重要な手段となっています。

例えば、スマートグリッドとスマートビル管理システムを擬人化してみると、このような会話を交わされているのではないでしょうか。 


スマートグリッド:明日の天気予報では気温が高くなります。電力需要が増加するので、ご協力をお願いします。もちろんご協力に対しては謝礼があります。 

スマートビル:謝礼は前回と同じですか? 

スマートグリッド:はい。削減量1キロワットあたり50円を平均電力利用料金から差し引きます。 

スマートビル:明日の午後1時から5時まで負荷削減モードで運用すれば100キロワットを削減できますが、いかがですか。 

スマートグリッド:やりましょう!



他にも、2つのスマートシステム間では以下のような会話が交わされる可能性もあります。 

スマートグリッド:こちらが今後48時間の時間あたり電力料金表です。 

スマートビル:今日は正午から午後2時までの料金が普段より高いので、昨晩製氷しておいた氷でビルを冷却し、その間の負荷を削減しましょう。



このようなシステム間の会話の後、最終的な意思決定には、人間の承認を要することが多いのですが、少なくともこの技術でビル管理者のアクションが容易になり、電力需給の効率が高まります。これはわずか数年前と比べても大きな進歩といえます。